抄録
大規模な空間の学習が必要となる課題において,高齢者は若年成人に比べて成績が低下することが知られており,その原因として特定の空間スキルの低下が挙げられてきた。本研究では高齢者の空間認知課題成績の低下を,メタ認知能力の低下であると仮定し,方向感覚,経路表現の理解度評定,実際の経路探索成績の関連を検討した。インターネットを通して20代から70代の成人男女が調査に参加した。結果として高齢者は若年成人に比べて自己の方向感覚を高く評定し,また経路表現の理解度についても高く評定するものの,実際の経路探索成績は上昇しなかった。これは高齢者の空間認知成績の低下が単に空間スキルの低下によるものではなく,メタ認知の正確さが低下することによって自己の能力や情報に対する理解度をよりポジティブに評価することによって生じている可能性を示唆している。