抄録
筆者らは過去に天野・近藤 (2003)のデータベースに基づいて刺激語の諸属性値を統制した語彙判断実験を行い,親密度が高くても誤答率の高い項目を複数見出し,親密度と実際との齟齬を感じた。そして,天野・近藤 (2003)の評定者と実験参加者の質的な違いがこの不一致の原因ではないかと考えた。そこで本研究では,刺激語を視覚呈示した語彙判断実験を実施するとともに同じ参加者に刺激語の文字単語親密度を評定させ,1.参加者とデータベースの評定値の比較,2.双方の評定値と誤答率の関係の比較,3.双方の評定値と語彙判断時間の関係の比較を行った。その結果,本実験参加者の文字単語親密度評定値の平均はデータベースより有意に低く,本実験参加者の評定値の方が誤答率や語彙判断時間との負の相関が高いことが明らかとなり,親密度のような主観的評定値には実験参加者とできるだけ等質な参加者のものを用いるべきことが示唆された。