抄録
現在従事している課題に対する注意コントロールが失敗し、課題無関係な思考が生起することを、マインドワンダリング(以下MW)と呼ぶ。先行研究では主に視覚的な注意課題を用いて、課題中のMWの生起機序が検討されてきた。しかし、聴覚刺激は視覚刺激に比べてより自動的に注意を捕捉するため、視聴覚刺激に対する注意コントロールは持続の仕方が異なると考えられる。本研究では、新たに聴覚的な注意課題を用いることで、課題モダリティがMWに及ぼす影響を検証した。さらに、注意コントロールを司る実行機能の働きを反映する、ワーキングメモリ容量(WMC)を測定した。実験の結果、次の2点が明らかになった:(1) 聴覚的課題では、MW頻度はWMCの調整を受けるが、MWの表れ方は調整を受けない。(2)視覚的課題では、MW頻度はWMCの調整を受けないが、MWの表れ方は調整を受ける。よってMWは課題モダリティにより左右されるといえる。