抄録
表情など顔の視覚情報に基づく社会的相互作用は,円滑な意思伝達のために重要だと考えられている。脳内では,顔の視覚情報処理が,顔全体の処理と眼など部位ごとの処理が並列する形で行われている。また,表情認識時に効率的な視覚情報処理を行うためには眼領域(眼, 鼻筋, 眉を含む)への視覚的注意が重要だと報告されている。しかし,眼領域への視覚的注意の発生機構は未だ明らかでない。そこで本研究では,顔の視覚情報処理と眼領域への視覚的注意の関係性を解明することを目的とした。その為に,眼領域を識別する二択課題を課し,選択肢によって視覚情報処理時の顔全体の処理と眼領域の処理の関連性を操作した。その結果,眼領域の予測に依存した後頭側頭皮質(視覚情報処理)と前頭皮質(眼領域情報の解釈)の脳波同期を発見した。以上から, 脳活動の大域的な同期によって,顔の視覚情報処理と眼領域への視覚的注意が関係している可能性が示唆される。