抄録
本研究では「気がきく」ことの構成概念を明らかにすることを目的とした。18歳から65歳までの480名(平均年齢31.1±10.5歳)に対し、予備調査の結果を踏まえて選定した41の質問項目に展望記憶に関連する質問8項目を加えた51の質問項目からなる調査票に5件法での回答を求めた。460名のデータについて項目分析(偏向項目の削除、G-P分析、因子分析)を行い、信頼性及び妥当性を検討した結果、状況把握、計画管理、他者肯定の3因子構造が得られた。気がきく程度の自己評定得点との相関分析を行った結果、自己評定得点は、状況把握や計画管理因子と弱い正の相関(それぞれρ = .294, ρ = .217)を示したものの、他者肯定因子とはほとんど関連がみられなかった(ρ = .126)。これらの結果から、他者肯定因子は「気がきく」ことの自己評定しにくい側面を表現しうる可能性が示唆された。