抄録
本研究では、言語による経路指示を人が行う際に観察される言語的特徴から当人の経路指示能力を推定するためのモデルの構築に向けて、次のような調査研究を行った。調査では、ある迷路に迷い込んだ人物を、その迷路内の特定の地点から出口まで、言語による経路指示のみで確実に辿り着けるように誘導するという状況を設定した。調査参加者は、まず言語的経路指示を自由記述によって回答した。その後、自身が回答した経路指示のわかりやすさと適切性に関する自己評価と、普段の自分自身の空間認知能力と経路指示能力に関する自己評価について回答した。言語的経路指示の自由記述データに対するテキストマイニングの結果と経路指示能力に関する4種の自己評価の結果から、経路指示記述の長さや一意性、そして、経路指示記述内の空間表現の種類や出現頻度などの特徴が、経路指示を行う当人の経路指示能力に関する自己評価とどのような関係にあるのかを検討した。