抄録
選択肢が同じくらい魅力があるとき,最も好ましいものを選択するという教示と最も好ましくないものを選択するという教示はどちらが簡単だろうか。意思決定に対する「捨てる」と「選ぶ」の教示の影響を検討するために選択課題を用いた実験を行った。選択課題は2つの課題から構成された。1つ目の商品選択課題は参加者が10個の選択肢の中から好ましいものを3つ選択した。2つ目の強制三択課題では,「1つ選ぶ」「2つ選ぶ」「1つ捨てる」「2つ捨てる」の4種類の教示をランダムに行い,参加者には商品選択課題で選択した3つから,教示に従い商品を選択した。結果として,「2つ捨てる」は「2つ選択」よりも選択時間が長かった。内観でも「2つ捨てる」は他の3つの教示と比べてより難しいと回答した。これらの結果から,選択肢を捨てることは選ぶよりも心理的負荷が高いことが示唆された。