抄録
自閉症者では鏡像模倣がしづらいという報告や、他者視点への切り替えが苦手との報告から、身体と空間の捉え方の特殊さが示唆されている。本研究では身体と空間との対応づけについて自閉傾向に関連した特性を検討するために、左右弁別困難と鏡像模倣の生じやすさについての主観的な自己評価や空間に対して連想される色のイメージの強度と、Autism-spectrum Quotient questionnaires (AQ)スコアとの関連を検討した。その結果、左右弁別が困難であると感じる人ほど鏡像模倣もしづらいと感じる傾向が示された。加えて、左右弁別が困難なほど自閉傾向も高く、方向への色イメージの連合が弱いことが明らかになった。以上の結果から鏡像模倣と左右弁別判断との認知基盤の共有が示唆され、なおかつこの身体と空間との認識の特性が自閉傾向と関連している可能性が考えられる。