抄録
顔ではない刺激が顔に見えることがある。これまで,このような顔様刺激は顔刺激と同様の視覚処理を受けると考えられてきた。しかし,その時間特性の違いについては検討されていない。本研究では,注意の捕捉に注目し,顔刺激と顔様刺激の視覚処理における時間特性について調べた。実験参加者は,高速逐次呈示される文字系列(SOA = 67ms)の中から特定の色で定義された文字(標的)を同定した。標的が呈示される前に,刺激系列の周辺に顔様刺激が妨害刺激として呈示された(Lag 0, 1, 2, 3)。その結果,Lagが2,3の条件で標的の報告率は有意に低下し,顔様刺激が注意を捕捉したことが明らかにされた。しかし,同様の結果のパターンは統制刺激を妨害刺激として呈示した条件においても見られたため,本実験で生起した注意の捕捉は妨害刺激に特異的な現象とは言えない。今後は,注意を捕捉すると考えられている顔刺激を妨害刺激として,比較検討を進めていく。