抄録
近年、視覚外にある現実の手の動きと視界内のrubber hand(手の人形やロボットハンド)の動きを同期させることで(運動・固有感覚-視覚間同期)、rubber handに対する身体所有感を付与する試みが増えており、影はこの感覚間同期を自然かつ容易に生成できる特徴をもつ.しかし影が身体所有感に直接的に及ぼす関係については未だ不明な点が多く存在する.本研究では、4つの影の外観環境(手・手と連動しない手の形状の影・手と連動する長方形・手と連動しない長方形)を用意し、手が静止あるいは運動する条件でドリフト量の計測(影を提示しない状態と提示した状態)とアンケートを実施した.実験の結果、影が手と一致した形状で連動する環境のとき、影を提示した状態でのドリフト量が提示しない状態より大きく上昇した.一方アンケートにおいてドリフト測定時の影の提示の有無による大きな差はみられなかった.