抄録
語彙学習事態において、エラー反応の視覚的確認が正答の学習を阻害するかどうかを検討した。古典的なA-B/ A-Dパラダイムによれば、手がかりと反応は“A-B”を形成し,手がかりとターゲットに当たる“A-D”の記憶に順向干渉を生じるはずである。実験1と実験2において、参加者に漢字熟語(160語)を一度に一つ口頭で読ませ、誤っていた場合には正答だけをフィードバックするか(反応FBなし条件)、反応と正答をフィードバックした(反応FBあり条件)。また、反応にどの程度自信があるかを確信度として試行ごとに測定した。その結果、再テストにおける確信度を込みにした平均手がかり再生率は、いずれの実験においても反応FBあり条件の方が有意に高かった。つまり、エラー反応の視覚的確認が正答の学習に順向干渉を生じることはなく、むしろ、その学習を促進することがわかった。