抄録
本研究では,不随意記憶現象を確実に捉えることのできるフィールドインタビューを2回実施し,不随意記憶の生起頻度の個人差が安定したものであるのかどうかを検討することを目的とした。2回の不随意記憶想起数間には強い正の相関が認められ(r = .96, p < .001),パーソナリティ特性や認知能力特性の安定性を示す相関係数と比較しても,1年の間隔をあけたフィールドインタビューで想起された不随意記憶数は個人内できわめて安定していることがうかがえた。不随意記憶は偶発的に生起すると考えられがちであるが,環境内の刺激を受容し,その刺激から過去のあるエピソードを無意図的に想起するプロセスにおいては,非常に安定したメカニズムが関与していることが推察された。