抄録
Murayama & Elliot (2011) は達成目標が学習方略選択に影響を与えるという仮説を提唱し,記憶課題において,遂行目標では維持リハーサルが,習得目標では関連性処理が促進されることを示した。DRMリストを用いてこれを追試したTokuoka, Yamane, and Osumi (2016) では,遂行よりも習得目標下で虚記憶が多く生起し,仮説が支持された。しかし,再度の追試を行った山根・徳岡・中條 (2016) では結果は再現されなかった。両者の手続きは集団実験と個別実験の違いがあり,個別実験を用いた山根ら(2016)で参加者の心的努力が高まった可能性がある。そこで,項目数を半分にした2つのDRMリストを合わせたものを記銘リストとしてCLに集まる処理資源を減少させたところ,個別実験でも,特性としての達成目標に関してMurayama & Elliot (2011) の仮説を支持することが示された。