私たちは記憶の主観的な経験に基づく単純なヒューリスティック(e.g., recognition heuristic, familiarity heuristic, fluency heuristic)によってかなり正確な推論ができることを先行研究は示している.本研究では,単純なヒューリスティックの適応的な性質について,集団意思決定の文脈で検証を行なった.具体的には,「集団メンバーの記憶が多様であれば,集団意思決定はより正確になる」という仮説を,行動実験とそのデータを用いた計算機シミュレーションを実施して,理論的な視点から検証を行なった.行動実験と計算機シミュレーションの結果はこの予測を支持するものであった.このことから,集団のグループメンバーが持つ記憶の多様性は,集団意思決定の正確性に影響を与え,パフォーマンスの向上につながる可能性が示された.