人は角のある物体に比べて丸い物体に好ましさを感じる傾向にあり(Bar & Neta, 2006),この効果は物体の種類に関係なく生じるといわれている。一方で,効果の大きさには一貫性がないという知見もあり,この差異は呈示時間や評価法の違いに起因する可能性がある。本研究では,二種類(角・丸)の実物及び無意味図形を90 msで呈示し,好ましさについて好き/嫌いの二択による測定を行った(実験1)。その結果,丸い実物が好ましいと判断されたが,無意味図形ではこの効果が認められなかった。また,被験者が判断するまで刺激を呈示した条件(実験2)および,判断を0から100のスケールとした条件(実験3)においても,二種類(角・丸)の好ましさに差は認められなかった。本研究の結果は,丸い物体を好ましく思う効果は呈示時間と評価法に依存することがわかった。すなわち,丸い物体の好ましさの効果は知覚的な段階ではなく,意味が関わる価値判断で生じることを反映する。