抄録
近年,認知的加齢は認知的制御機能の減衰が主原因ではないかとの仮説が広く受け入れられている.そこで,認知的加齢と日常的な二重課題状況としての「ながら聴取」の関係を明らかにするために,加齢に伴い,音楽などの聴取が干渉的な効果をもたらすか否かを検討した.実験では視空間的認知課題として3x3マトリクスに文字が表示されるNバック課題を用い,文字種あるいは文字位置をターゲットとして回答を求めた.実験の結果,特に文字位置をターゲットとした位置課題において,反応時間において,音環境が提示されない統制群に比べ,ノイズキャンセリング機能をオンにした3条件(ヘッドフォン装着のみ,音楽提示,サウンドスケープ提示)では反応が同等に早くなることを示され,その影響は若年成人により強く示された.日常的な環境雑音を取り除くことが特に視空間的な認知的制御機能を促進すること,その効果と認知的加齢の関係性について考察する.