抄録
ワーキングメモリの容量が、条件推論のパフォーマンスに影響する可能性が示されている。このタイプの推論のプロセスを説明する理論としては、確率的な情報に基づいて判断する確率論的説明と、反例を検索して最終的に結論を出すメンタルモデル的説明の2つが代表的である。先行研究によれば、メンタルモデル的説明の方が、より多くのワーキングメモリを必要とするため、ワーキングメモリの容量が少ないほど、確率論的に解釈し、ワーキングメモリが多いほどメンタルモデル的に解釈する。しかし、近年の推論の確率論的理論(新パラダイム)においては、条件文の理解や条件推論はラムゼーテストと呼ばれるプロセスに従うとされており、このプロセスはワーキングメモリを使用すると考えられる。そこで、本研究では、ワーキングメモリ容量と、条件推論課題(確率判断と真理値表課題)の回答パターンとの関係を明らかにすることを目指す