抄録
近年,遠隔での対話機会が増える一方で,そこでの非言語コミュニケーションの難しさが指摘されている.そこで本研究は,旅行代理店での接客場面を想定し,通常の遠隔対話システムを用いた接客と対面接客,およびアバター映像を用いた遠隔接客との比較を目的とした実験を行い,客の年齢層の影響を加えて検討した.本発表では店員・客間の対話時視線行動について報告する.実験の結果,遠隔接客では1回の視線行動の持続時間が長く,知覚的処理に時間を要している可能性,および若年客はアバター映像時の視線行動の持続時間が短くなり映像からの情報収集に消極的な可能性が示唆された.また接客対話において,若年客では店員・客間で同等の頻度で相手へ視線を向けるという協働問題解決が見られた一方,高齢客には店員が一方的に視線を向ける非対称性が生じており,高齢客が問題解決重視になることにより店員側にコミュニケーション負荷がかかる可能性が示された.