抄録
冬は交通条件が悪化することが多く、交通事故が多いと言われている。交通条件悪化に適応するには素早い反応や判断が求められるため、特に認知機能低下がみられる高齢ドライバは冬の運転リスクが高いと考えられている。しかし交通統計は個人内の変動を考慮していない。本研究では個人内の冬の運転リスクを検討するために、高齢ドライバ85名の有効なドライブレコーダデータを用いて、季節ごとにCrash and Near-crash事例 (CNC) を抽出した。個人内の冬の運転リスクについて春を比較対象として検討したところ、冬と春のCNC件数に相関関係 (r=0.8) が認められ、季節を通してCNC件数の多い、あるいは少ないドライバの季節間の差の拡大が冬の運転リスクにつながることが示された。冬のCNC件数と各要因との関係を検討した結果、冬の運転リスクは認知機能や運転習慣、行動様式で説明される可能性が示唆された。