抄録
マルチメディア学習において,一般的には視覚情報に音声情報を追加することが学習のサポートになることが示されている。一方で,同じ情報を複数の方法で同時に提示することにより負の影響が生じる場合も存在する。本研究では,読解能力を規定する能力として語彙数を取り上げ,大学生41名を語彙数の違いで2群に分け,大学入試レベルの文章の読解を行わせた。文章と同時にその文章を読み上げた音声を提示する「音声あり」条件,文章のみを提示する「音声なし」条件を設け,文章の逐語記憶と内容理解の測定を行った。その結果,逐語記憶・内容理解ともに交互作用のみが見られ,語彙数低群では音声がある場合に逐語記憶成績がよく,語彙数高群では音声がある場合に内容理解成績が低下した。読解能力の低い学習者に対しては読み上げ音声の同時提示が有効となる一方で,語彙数高群にとっては音声の同時提示が学習を阻害する認知的負荷になるというredundancy効果が示された。