抄録
実世界の現象は不確実性を伴うことが多いため、人は言語的な確率表現を用いてその現象を伝達し、またその情報に基づいて意思決定を行う。これまでの研究で、言語的な表現が伝達する数的情報(例:「わずかな見込み」は低い確率を、「ほぼ確実」は高い確率を伝える)のみならず、ニュアンス(例:「わずかな見込みがある」のようなポジティブ表現、あるいは「あまり見込みはない」のようなネガティブ表現)が私たちの意思決定に影響することが示されている。本研究では、言語的確率表現に基づいて意思決定を行ったときのパフォーマンスを自閉症者と健常者間で実験的に比較し、自閉症者の不確実性理解と意思決定の特徴を分析した。結果として、自閉症者は、1)言語的なニュアンスの影響を強く受ける、2)言語が伝える数的情報の影響は小さい、という2点が明らかになり、健常者とは異なる形で不確実性を理解し、また意思決定を行っていることが示された。