抄録
特定の目標情報の検索によって,関連のある非目標情報の検索を抑制し,思い出しにくくなる現象は検索誘導性忘却(Retrieval-induced forgetting; RIF)と呼ばれている(Anderson, Bjork, Bjork; 1994)。本研究では,エピソード的未来思考(Episodic future thinking; EFT)におけるRIFが生起するかどうかを検討した。結果,EFTの検索によって,関連のあるEFTを忘却することを示した。つまり,EFTにおいてもRIFが生起することが明らかにされた。この結果は自伝的記憶(Autobiographical memory; AM)におけるRIFが生起すると示された先行研究(eg., Barnier, Hung, & Conway, 2004; Harris, Sharman, Barnier, & Moulds, 2010; Ditta & Storm, 2016)の結果と一致した。そのため,構築的なエピソードシミュレーション仮説(Constructive episodic simulation hypothesis),つまりEFTとAMの検索プロセスが同じである仮説を支持した。