抄録
識別後フィードバック効果(PIFE)とは,識別の正確性に関するフィードバックが目撃者記憶を歪める現象のことを指す。これまで,フィードバックが目撃者記憶に影響を与えることが示唆されているが,歪んだ記憶が目撃者の行動に影響を与えるかどうかは明らかではない。本研究では,確証的なフィードバックを与えられた実験参加者が,裁判の証拠として実験データを提供する割合が高いかどうかを検討した。識別直後,参加者は確証的フィードバック条件(いいですね、被疑者を選びましたね),非確証的フィードバック条件(実は被疑者は_番だったんですよ),フィードバックなし条件のいずれかに分けられ,条件に応じたフィードバックが与えられた。その後,すべての参加者が従属変数に関する質問に回答した。その結果,PIFEの再現性は確認されたが,確証的フィードバックを与えられた参加者が他の条件に比べて実験データを提供する割合が有意に高いわけではなかった。