抄録
未来において実行することを意図された行為のうち、意図形成の時点と実行の時点との間に遅延がある行為のことを遅延意図と呼ぶ。本研究の目的は、遅延意図の意図状態と、遅延意図についての未来思考が経験される頻度との関連性を検討することであった。532名の成人男女に日常場面における遅延意図の想起と、その意図状態の各側面の評定を求めた。また、想起された遅延意図の成功・失敗についての意図的・無意図的未来思考を経験した頻度についても評定するよう求めた。遅延意図の意図状態を説明変数、未来思考の経験頻度を基準変数とする重回帰分析を行った結果、意図状態のうちMustの強度と意図的未来思考の頻度との間に有意な関連性が見られるが、Mustの強度と無意図的未来思考の頻度との間にはそのような関連性が認められないことなどが示された。本研究の結果に基づき、意図状態の各側面に備わる機能についての考察を行う。