抄録
人に対する行動信頼性の学習において,顔認識能力の高低がどのような影響を与えているかを実験的に検討した。日本語版20項目相貌失認尺度により,顔認識能力の高群12名,低群11名の大学生が実験に参加した。実験では投資ゲーム(Suzuki,2018)を元に,顔写真と名前を同時提示した後にその人物が良い人か悪い人かを繰り返し経験しながら投資成績を上げるよう求められた。投資ゲーム後,顔写真+名前提示,顔写真のみ提示,名前のみ提示の3条件で再認課題(良い人/悪い人/新奇の3肢)を行った。実験の結果,投資ゲームの成績には顔認識能力による差は見られなかったが,再認課題の成績に差があり,特に顔認識低群は「悪い人」の記憶成績が低かった。再認時マウス軌跡の分析から,顔認識高群は表示された顔情報に影響を大きく受ける一方,顔認識低群は顔情報を利用せず,顔写真+名前の画像全体を人物として見ていること,記憶する対象を限定している可能性が示唆された。