抄録
目の前にある物体の位置や方向の把握については、自分自身の現在の状況とも照合して判断されると考えられる(Ambrosini & Costantini, 2017)。本研究は、対象を実際に把持することが、対象を傾ける動作の理解に影響するかを調べたものである。本実験の課題は、傾いた対象の写真を提示し、その写真のように対象を傾けるには、どのような動作を行うことが正しいかを判断するものであった。実験参加者には、傾いた対象の写真が呈示された後、手の動作のアニメーションが呈示された。実験参加者は、最初に提示された対象の写真で示されたように対象を傾ける場合に、次に提示されたアニメーションの手の動作が適切かどうかを判断し回答した。また、この課題に対して実際に写真と同じ対象を把持した状態で回答する群(把持群)と、何も持たずに回答するだけの群(非把持群)を設けた。把持群と非把持群の回答を比較したところ、把持群の誤反応率が非把持群よりも低いことが示された。