抄録
没入型ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を用いた映像視聴は遠く離れた場所や、簡単には到達できない環境を簡単に体験することができる。本研究は, 没入型HMDを用いて、重力環境下での微小重力空間の映像視聴体験が引き起こす没入感や酔いについて検討を行った。微小重力環境の映像は国際宇宙ステーション内で撮影され公開されている映像を用いた。また統制条件として地球上で撮影された映像を用いた。重心動揺計を用いて動画を視聴中の重心動揺を測定した。また視聴後の酔いの程度をSimulator Sickness Questionnaire(SSQ)によって測定した。実験の結果、微小重力環境の映像は重力環境の映像よりも重心動揺を大きく引き起こし、主観的な酔いを感じさせることが示された。従って、重力環境下であっても、没入型HMDによる微小重力環境の視覚体験は身体動揺を引き起こすような強い没入感を感じさせることが示唆された。