抄録
過去の経験を他者に伝える際,実際の経験よりも誇張したり,過小に表現したりすることがある。先行研究により,人が自身の経験を他者に伝える際,半数以上に何らかの修正(自伝的編集)が行われることが明らかとなっている。このことから,ギャンブル依存において,ギャンブルに関する自身の記憶を歪めることで,ギャンブル行動が強化されると考えらえる。そこで,本研究では,ギャンブル依存傾向と自伝的編集との関連を明らかにすることを目的とした。日常的にギャンブルを行っている一般成人221名を対象にオンライン調査を行ったところ,対象者の60%以上が自身のギャンブル体験を正確に他者に伝えたと評価したが,一方で,そのうちの30%がなんらかの自伝的編集を行っていた。また,ギャンブル依存傾向が高いほど,自伝的編集を多く行っており,ギャンブル経験を誇張したり,実際にはなかったことを付け加えて他者に伝えていることが明らかとなった。