抄録
個人が過去に経験した出来事に関する記憶の総体は自伝的記憶と呼ばれ,その構造やメカニズムの解明を目指し,これまで多くの研究が行われてきた。近年,Boyacioglu & Akfirat (2015)は,従来の複数の質問紙を統合し,新たに自伝的記憶特性質問紙(Autobiographical Memory Characteristics Questionnaire, 以下AMCQ)を開発し,これまで山本他(2021)はその日本語版について検討してきた。本研究ではAMCQ日本語版の妥当性を検討することを目的とした。一般成人734名を対象にオンライン調査を実施し,自己定義記憶についての想起を求めたうえでAMCQ日本語版,SNS(Southampton Nostalgia Scale)日本語版,日本版ZTPI(Zimbardo Time Perspective Inventory)への回答を求めた。得られたデータについて相関分析を行った結果,AMCQの各因子とSNS,AMCQの各因子とZTPIの各因子との間に複数の有意な相関係数が確認された。これらの結果から,AMCQ日本語版の一定程度の妥当性が示唆された。