抄録
高齢化の進展に伴い働く高齢者は増加傾向にあり,高齢者がより安全で安心して働くためには加齢に伴う心身の変化に対応した労働環境の整備が重要である.本研究では,同一地域に居住する高齢者を対象として,注意機能と日常生活における失敗傾向についての関連を明らかにするための予備的検討を行った.18名(平均年齢74.1歳)を対象とし,注意機能の測定にはD-CAT(Digit Cancellation Test)のうち1文字を抹消するD-CAT1と3文字を抹消するD-CAT3により作業量を測定した.また,失敗傾向質問紙のアクションスリップと認知の狭小化の因子のうち因子負荷量が0.40以上であった計19項目によって日常生活における失敗傾向を評価した.相関関係を算出した結果,年齢に相関は見られず,D-CAT3とアクションスリップに有意な正の相関がみられた.よって,D-CATで評価された注意機能が高い場合でも行動へ適切に注意配分されないことによるアクションスリップの傾向が高く,注意機能の異なる側面が示された.