抄録
オノマトペの言語音と意味との間には自然な結びつき(音象徴)が存在する。例えば,粗さ・重さ・大きさの印象は第1モーラが有声音の方が無声音よりも高いといわれる。本研究では有声性に加え,オノマトペの既知性が粗さの印象に及ぼす影響を検討した。「すらすら」「ずのずの」のように,第1,3モーラの有声性 (無声/有声)と既知性 (既存/新奇) を独立して操作し,オノマトペ音声の響きから感じる粗さの印象(粗い―なめらかな) をオンライン実験 (N = 62) で評定させた。その結果,有声音は無声音よりも粗いと評定され,先行知見が確認された。さらに,新奇なオノマトペは既知のオノマトペよりも粗いと評定され,有声性と既知性の交互作用は認められなかった。これらの結果は,新奇オノマトペの処理流暢性の低さが粗さの印象に影響を与えた可能性を示している。