抄録
高い価値が与えられた学習項目が覚えやすいことは,価値誘導記憶(value-directed remembering)として知られている。価値が学習項目の特徴が統合された記憶を促進するのかどうかは十分に検討されていなかった。Yin et al. (2021)はこの点を検討した。実験では,高価値または低価値を付与した色付きの刺激(単語や画像)が呈示され,学習時に刺激のみを覚えるよう教示される群と学習時に刺激と色の両方を覚えるよう教示される群(統合を促す群)の間の記憶成績が比較された。実験の結果,学習時に統合が促進された場合のみ,特徴(色)が価値によって促進されることが明らかになった。本研究はYin et al. (2021)の実験3a/bの事前登録型追試として,2つの実験を実施した。実験の結果,統合の促進によらず,価値が刺激自体の記憶を促進することは再現された。一方で,刺激の特徴(色)については十分に再現できなかった。