抄録
注意欠如・多動症(ADHD)には持続的注意と注意選択における困難が報告されている。しかし従来の注意課題は刺激間競合もしくは知覚的処理要求が低い状況であったため、ADHD児(者)における初期注意選択のあり方は依然明らかではない。そこで本研究は、刺激の高速提示により知覚的負荷を高め、初期選択過程を観察可能にした事象関連電位(ERP)の持続的注意課題(Heinze et al., 1994, Nature)を用いた。結果、健常大学生におけるADHD傾向が高いほど右注意条件においては、誤警報率は減少し、ERPのN1注意効果(注意視野の同側より対側半球での振幅増大)は増加した。これらはADHD傾向による注意選択の効率化を示すため、これまでの報告と大きく異なる。しかし、遅延報酬嫌悪と関わり、ADHD傾向の高い個人においては高速提示された刺激が即時報酬となって、注意の焦点化が促進された可能性が考えられる。