抄録
モーツァルト効果は、モーツァルトの音楽K.448を聴いた参加者のIQが約10ポイントほど向上を示したと報告された(Rauscher, Shaw, & ky,1993など)ことから有名になったが、林(2023)はモーツァルトが作曲した音楽を用いなくともオリジナルの小曲を聴かせてリラックスし穏やかな精神状態となることで空間把握能力等の一部知能が向上する可能性があることを示した。本研究では、音楽を用いずとも、深呼吸によってリラックスすることによっても同様の効果が生じうるか、大学生48名の協力を得て、深呼吸の前後に空間把握等の知能検査と感情測定を行う実験を行った。深呼吸前後の知能検査の得点を分散分析したところ、統計的に有意な差は得られなかった。本研究の結果は、知能向上には音楽によるリラックスが重要な可能性、深呼吸によるリラックスでは十分ではなかった可能性などが示唆されるものとなった。