抄録
SNARC効果とは、数の偶奇判断などを行わせた際に、より大きな数字に関しては右手による反応が速くなり、より小さな数字に関しては左手による反応が速くなる現象である。心的数直線の実態については、実際に数直線上で数の見積もりを行わせるNumber Line Estimation(NLE)課題でも評価されているが、このNLE課題の遂行様相に関して、SNARC効果が生じるのか検討したものは、未だ存在しない。本研究ではまず定型成人を対象として、SNARC効果を検討するための標準的な課題を行うと共に、NLE課題の遂行様相をハイスピードカメラで撮影し、その反応時間や運動時間を分析した。また、数認知の問題が指摘されることが多い自閉スペクトラム症者に対しても試験的に測定を行った。測定の結果、いずれの群に関しても標準的な課題ではSNARC効果の生起を認めることができた。NLE課題において同様の効果を認めることはできなかったが、本課題の遂行様相は群間で異なっていた。