抄録
我々は日常的に様々なイベントを経験するが,その経験前から、経験後にかけて、イベントに対する主観的な時間的距離を知覚している。経験前の時点からイベントまでに感じる時間的距離は、経験後の時点からイベントまでに感じる時間的距離よりも過小評価されるという非対称性があり、これを時間的ドップラー効果という。本研究では、実際にストレスイベントを経験させ、イベント前後におけるイベントまでの時間的距離の主観的な感覚をイベント前後20分、前後14分、前後3分という時点で追跡した。加えて内受容感覚の正確さおよび敏感さをそれぞれ心拍検出課題とBPQによって測定した。その結果、イベント前後20分、14分においては、時間的ドップラー効果が生じていたほか、内受容感覚においては敏感さ(BPQ)がイベント経験後における、イベントまでの時間的距離の感覚に影響を及ぼしていた。
本発表では実際に経験させたイベントにおける時間的ドップラー効果の存在について、個人の内受容感覚の影響や同時に測定した生理学的指標変動という点を踏まえて、時間的ドップラー効果のメカニズムについて議論する。