抄録
学習活動への取り組みを示す概念であるエンゲージメントは,より「状況」に根差した学習への取り組みを捉えようとしている概念である(梅本他, 2016)ことから,本研究では特定の授業を想定しない「大学の授業全般」と「特定の授業」を区別して検討を行った。特定の授業としては1年生向けの初年次教育科目を対象として,感情的・行動的エンゲージメント(梅本他, 2016)を目的変数とし,学期当初と最終回の2時点で測定した,受講生の授業外での学習活動への取り組みに対する主観的な実行の程度・有効性の認知・コスト感,班活動に関わるリーダーシップ行動(木村他,2019)と,個人の達成目標志向(中川・藤田,2018),および特性的とされる能動的先延ばし傾向(吉田,2017)を説明変数として分析を行った。エンゲージメントがいずれの要因によって強く規定されるのか,また,大学の「授業全般」と「特定の教科の授業」の想定の違いによってエンゲージメントが異なるのかを検討した。