抄録
室空間の開口部は開放感や安らぎ等の心理効果をもたらす。本研究は細長い開口形状を特徴とするスリット窓に着目し,窓の設置位置や面数,開口幅が空間の大きさ感と印象評価に与える影響を検討した。様々なパターンのスリット窓を設置した仮想空間のCG画像を準備し, マグニチュ?ド推定 (ME) 法による空間の大きさ感評価と意味微分(SD)法による空間の印象評価を行った。分析の結果,スリット窓の開口幅が広くなると空間の大きさ感と“軽快性”印象は全般に高まるが,その程度は窓の設置位置あるいは面数に応じて変化する傾向がみられた。一方,空間の“居心地性”印象は窓の設置位置によって開口幅の効果が異なり,空間上部(天井面との境界部分)に窓を設置した場合は開口幅が広いと“居心地性”が高いが,下部(床面との境界部分)に設置すると逆に低いケースが多く見られた。これらの結果の要因を錯視や生活空間としての機能の観点から考察した。