抄録
系列依存性は知覚が以前の知覚に影響される現象であり,そのメカニズムの解明が求められている。数推定課題における系列依存性は,直前に知覚した刺激の数が多いほど,後続刺激の数の推定誤差が正の方向に大きくなるという形で生じる。また数推定課題においては,直前の刺激に対する回答(参加者が推定した数)が大きいほど後続刺激の推定誤差が増加することも知られている。数の系列依存性の研究では主にドット配列が刺激として用いられ,刺激の時間変化による数の表現については十分に探究されていない。本研究では,ドットの点滅回数を推定する課題における系列依存性を検証した。実験の結果,直前の刺激の数による系列依存性は確認されなかったが,直前の試行の回答からの系列依存性が確認された。この結果は,点滅回数を知覚する段階ではなく,知覚から数表象を生成する段階で系列依存性が生じた可能性を示唆している。これは,系列依存性が刺激や課題によって様々な段階で生じるという先行研究の知見と合致している。