抄録
目撃者遂行型調査 (SAI) は、目撃情報を効果的に取得できる質問紙である。事件直後に目撃者自身がSAIを通して記憶を想起することが後の目撃供述を促進する可能性が示されているが、SAIが後の人物同定に及ぼす影響は明らかでない。そこで本研究はSAIを行った後の同定の正確性について検討した。164名の実験参加者は架空の事件のビデオを視聴した後、SAI群はSAIを用いてビデオの内容を、統制群は自由記述で授業の内容を想起した。その後、ビデオの中の犯人の同定を行った。分析の結果、SAI群と統制群で人物同定の正答率に違いはなかったが、SAI群の方が、事前の想起が同定に好影響をもたらすと考えていた。また、同定でフォイルを選択した場合の確信度はSAI群の方が高かった。SAIを行った目撃者は、後の人物同定に関するメタ認知が不正確になる可能性があるため、確信度等の指標の評価は慎重に行う必要があると考えられる。