抄録
文章読解時に頭の中で聞こえる声(Inner Reading Voices:IRV)は、多くの者が体験する現象であるが、その機序も機能も未解明な多い。また、IRVを認識する程度には、個人差も刺激文差も大きいが、この差異が文章の読解プロセスや、理解と関係があるのかどうかも不明である。IRVの解明を進めるには、IRV認識の程度を測定する手法を確立する必要がある。そこで本研究では、IRVの認識程度を測定する尺度を開発することを目的として、日本語文刺激18種のIRVの体験しやすさを比較した。刺激文ごとのIRV認識者率を比較したところ、文によって認識者率には10%程度から70%超までばらつきがあった。会話文では認識者が多く、説明文では少ないなど、従来の知見と合致する結果が確認できた。IRV認識者が50%程度となる4文を、IRVを認識する程度の個人差を測定する質問項目として用い、よりIRV認識者が少ないと予想される抽象度の高い刺激文におけるIRV認識の程度との関連を検討したところ、正の相関がみられた。