抄録
2014年4月に,「ISO 16311:Maintenance and repair of concrete structures」が発刊された。これは,コンクリート構造物の維持管理と補修に関する国際標準としては最初のものであるが,また,この標準の作成に携わったISO第71専門委員会第7分科会は,日本と韓国の共同提案により設置,運営され,言わば,アジア発信のISO標準である。しかし,その制定の過程では,欧米をはじめ各国・地域の維持管理や補修の現状も踏まえた多くの議論が交わされ,制定までには10年を要した。制定されたISO 16311は,「Part 1:基本原則」,「Part 2:既存構造物の診断」,「Part 3:補修設計」,「Part 4:補修施工」の4つから構成されるが,本稿では,このISO標準の制定に至るまでの経緯とPart 1の内容について概説する。