2023 年 20 巻 3 号 p. 56-68
シリカガラスなどの固体中に埋め込まれて形成された金属ナノ粒子に対して十数 MeV 以上の高エネル ギー重イオン(高速重イオン)を照射すると,照射前はほぼ球形だったナノ粒子がイオンビームと同方向 に伸び,葉巻型の回転楕円体(prolate spheroid)やナノロッドのような形に変形する.本解説(前編)では この現象の特徴的な挙動に関する実験結果を紹介する.そして現象を金属ナノ粒子及びシリカガラスの 固体電子系と高速重イオンとの“衝突”という観点から解釈し,引き続き起こる固体電子系の励起,格子系 へのエネルギー伝達,金属ナノ粒子の融解や気化などを考察する.