原子衝突学会誌しょうとつ

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極短パルスの X 線自由電子レーザー(X-ray free electron laser; XFEL)は未踏の X 線強度を実現し, 未知構造の決定や光誘起反応の観測を可能にするだけでなく, 非線形 X 線光学という新分野を切り拓いている. 生命科学, 材料工学をはじめとした広範な分野へと XFEL 利用研究を展開していくうえで, 高強度 X 線と物質との相互作用, およびそれに後続した緩和的な反応過程について理解する必要がある. 光と物質との相互作用, およびその後続反応を調べるうえで, 希ガスクラスターは理想的な系の一つである. 我々は, 希ガスクラスターへの XFEL 照射によって誘起されるナノプラズマ形成に着目し, XFEL 誘起反応の理解を目指した. 本稿では, XFEL 誘起ナノプラズマの生成 · 崩壊ダイナミックスに関する一連の研究成果について解説する.

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シリカガラスなどの固体中に埋め込まれて形成された金属ナノ粒子に対して十数 MeV 以上の高エネルギー重イオン(高速重イオン)を照射すると，照射前はほぼ球形だったナノ粒子がイオンビームと同方向に伸び，葉巻型の回転楕円体(prolate spheroid)やナノロッドのような形に変形する.本解説(前編)ではこの現象の特徴的な挙動に関する実験結果を紹介する.そして現象を金属ナノ粒子及びシリカガラスの固体電子系と高速重イオンとの“衝突”という観点から解釈し，引き続き起こる固体電子系の励起，格子系へのエネルギー伝達，金属ナノ粒子の融解や気化などを考察する.

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