2024 年 21 巻 2 号 p. R005-
私たちは,光化学反応途中の分子構造ダイナミクスを直接観測することを最終的な目標として,超高速X 線光電子回折法という手法の開発研究を続けている.これまでに,硬X 線・軟X 線の超短パルスである自由電子レーザーを利用して,配列した分子からの光電子角度分布の観測に成功した.同時に,光電子回折理論に基づくシミュレーションを利用して分子の瞬時構造を推定するための解析プロトコルを確立した.また,自由電子レーザー実験では必然的に表れる遅延時間の揺らぎの影響を低減するために,光電子と同時に生成されるフラグメントイオンの運動量を基にデータを並べ替える手法を試みた.その結果、光電子角度分布の分子配列依存性を明らかにした.開発の現状を紹介するとともに,今後の課題を議論する.