原子衝突学会誌しょうとつ
Online ISSN : 2436-1070
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  • 井口 有紗, 久間 晋
    原稿種別: 解説
    2024 年 21 巻 2 号 p. R004-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/10
    ジャーナル フリー

    温度1 K 以下の低温分子の高分解能な分光法として,摂動が小さく等方的な4He の極低温環境に分子を捕捉する,超流動ヘリウムナノ液滴を用いる手法がある.内包された中性分子は液滴温度0.37 K に冷却され,孤立気相分子に近い振る舞いをし,He の電子衝撃イオン化と電荷移行反応によって効率的にイオン化される.近年,液滴温度に冷却された分子イオンの質量選択的な赤外振動分光が可能になり,気相では観測できなかった水二量体イオンの準安定状態の分光観測に成功した.本稿ではヘリウム液滴による低温分子イオン分光の詳細と,液滴の内包分子を急冷する特徴によって得られた分子イオンの準安定状態の観測について解説する.

  • 峰本 紳一郎
    原稿種別: 解説
    2024 年 21 巻 2 号 p. R005-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/10
    ジャーナル フリー

    私たちは,光化学反応途中の分子構造ダイナミクスを直接観測することを最終的な目標として,超高速X 線光電子回折法という手法の開発研究を続けている.これまでに,硬X 線・軟X 線の超短パルスである自由電子レーザーを利用して,配列した分子からの光電子角度分布の観測に成功した.同時に,光電子回折理論に基づくシミュレーションを利用して分子の瞬時構造を推定するための解析プロトコルを確立した.また,自由電子レーザー実験では必然的に表れる遅延時間の揺らぎの影響を低減するために,光電子と同時に生成されるフラグメントイオンの運動量を基にデータを並べ替える手法を試みた.その結果、光電子角度分布の分子配列依存性を明らかにした.開発の現状を紹介するとともに,今後の課題を議論する.

  • 立花 佑一, 森本 裕也
    原稿種別: 解説
    2024 年 21 巻 2 号 p. R003-
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/16
    ジャーナル フリー

    静磁場型エネルギー分析器は高速電子のエネルギー分析に適しており,電子顕微鏡や加速器の分野でよく用いられている.しかしその設計指針の詳細を与える文献は少なく,経験の浅い研究者が静磁場型分析器の設計や制作に取り組むにあたって大きな障害となっている.そこで本稿では,静磁場型電子エネルギー分析器の設計に必要な基礎理論を概説するとともに,電子軌道シミュレーションを用いた具体的な設計例を紹介する.特に,走査型電子顕微鏡や電子線回折で使用されるエネルギー数十keVの電子を対象に,90度偏向型の分析器の例を与え,そのエネルギー分解能を議論する.

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