静磁場型エネルギー分析器は高速電子のエネルギー分析に適しており,電子顕微鏡や加速器の分野でよく用いられている.しかしその設計指針の詳細を与える文献は少なく,経験の浅い研究者が静磁場型分析器の設計や制作に取り組むにあたって大きな障害となっている.そこで本稿では,静磁場型電子エネルギー分析器の設計に必要な基礎理論を概説するとともに,電子軌道シミュレーションを用いた具体的な設計例を紹介する.特に,走査型電子顕微鏡や電子線回折で使用されるエネルギー数十keVの電子を対象に,90度偏向型の分析器の例を与え,そのエネルギー分解能を議論する.