抄録
先史時代の社会において、土器生産は社会や文化の変化を反映し、生産体制や専門化の進展は遺物の形状に表れることが広く知られている。近年、計算・デジタル技術の進歩により、形状変化を定量的に分析することができ、先史社会における生産組織に関する新たな知見を得ることが可能となった。本研究では、幾何学的形態計測法を用いて、弥生時代初期から前期(紀元前900/800 年~紀元前300 年)の調理用土器(甕形土器)の生産変化を検討した。この時期は、農耕社会への移行、水田耕作の拡大、人口増加、社会階層の形成といった大規模な社会的変化が特徴的である。分析の結果、甕形土器の形状のばらつきが減少する傾向が確認され、生産が家庭レベルから、より専門化された小規模グループによる体系的な生産体制へと移行した可能性が示唆された。また、甕形土器と壺型土器の標準化の度合いの違いは、用途や生産率が物質文化専門化に与えた影響を明らかにしている。本研究の成果は、古代日本における人口動態や社会構造の変化が生産体制に与えた影響を明らかにするとともに、各時代や地域の生産活動を比較分析するための重要な基盤を提供するものである。