本論文は、フィールドワークを通して秋葉原地域の場所性について検討し、「情報が空間を生み出す」ことにより、地域としての秋葉原が、空間情報空間のアキバになることを考察したディスカッションケースである。筆者は、これまでの研究から策定した地域分析モデルを通して、ツーリズム(観光行動)がアキバ(情報空間)にどのような意味をもたらしているのかを考察した。アキバツーリズムのほとんどの場合は、コンテンツ・ツーリズムである。 本論文は、アキバツーリズムのメカニズムを「ルイーダの酒場(通称)」(場所的には、秋葉原のヨドバシカメラマルチメディアAkiba1F前)、AKB48カフェ、パーツ屋を事例に考察したものである。この様な場所の事例の集合体が、“アキバ(情報空間)”となっている。そして、アキバツーリズムは、不安定なアキバ(情報空間)の深層において観光の特徴である非日常性を演出し、地域とツーリストにとっての調整(現実空間と虚構空間の境目の統合)を担っているものと考察できる。そして、そのツーリズムが、ハードの技術革新(イノベーション)の都市である秋葉原(地域の評判)が、ソフトのイノベーションの都市としてのアキバ(情報空間)に変えたものと思われる。この秋葉原地域におけるイノベーション性が秋葉原地域の産業の変遷を引き起こしているのである。