コンテンツツーリズム学会論文集
Online ISSN : 2435-2705
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観光資源としてのコンテンツの再検討および近代観光の発達に及ぼした絵葉書の影響に関する歴史社会学的研究
毛利 康秀
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2017 年 4 巻 p. 13-23

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抄録

本稿は、コンテンツツーリズム領域における歴史的・社会的知見の積み増しを目指して、絵葉書のメディア的な機能に着目し、観光資源としての分類法を確認しつつ、絵葉書が近代観光の発達に果たした役割、特にコンテンツツーリズムの発達に及ぼした影響に関する再評価を試みた。 コンテンツの意味するところは幅広いが、観光資源としてのコンテンツという視点から見た場合、「地域イメージと結びつき、その地域を訪れる動機となる情報内容」が相当し、それは小説や映画・ドラマなどのオリジナル作品(一次コンテンツ)、作品を二次利用した無形・有形の関連物(二次コンテンツ)に分類することが出来る。さらに、関連する記事、批評、評判情報、ファンの意見交換などのコミュニケーション活動全般もコンテンツと見なすことが可能であり(三次コンテンツ)、この3種に分類されるコンテンツ群はいずれもコンテンツツーリズムを発達させる重要な要素となる。 ここで、コンテンツとしての絵葉書に着目すると、絵葉書は画像情報とともに信書を伝達出来るメディアであり、パーソナルメディアとしてはもちろん、画像情報を広く拡散するマスメディアとしての側面も有しており、特に黎明期にはその傾向が強かった。それ自体がコンテンツとしての性格を帯び、有力な観光資源にもなっている。 本稿では、主に戦前期から戦後にかけての熱海・那須塩原(金色夜叉)、下田(唐人お吉)、ハルビン(ハルピン見物)の絵葉書を事例として検討を行った。作品のモデルとなったそれぞれの地域において風景写真の絵葉書が大量に制作され、近代観光の体験を共有するメディアとして流通していたが、それに加えて作品世界を表現した絵葉書や作品のモデル地をあしらった絵葉書が作られ、さらには地域イメージを表象したオリジナル作品と呼ぶべき絵葉書も作られていた。すなわち絵葉書は、作品世界の創造(一次)、作品世界の二次的表現やモデル地の表現(二次)、関連コミュニケーション(三次)という、コンテンツの類型の全てをカバー出来るメディアであり、コンテンツツーリズムの発展に寄与するメディアでもあったと再評価することが可能である

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