これまでに実施してきた種々の保形性食材を加熱した際に見られる食材内部の熱移動に関する実験研究の結果と対比させながら,今回の冷却に関する研究においては各種の食材冷却時におけるその内部熱移動を観測し,それを現象論的に記述することを試みた。すなわち,食材を一定温度にまで冷却する操作を開始した直後に見られる試料温度の急激な低下は比較的急速に緩慢になり,やがて徐々に収束するようになる。このような状況は,試料の温度が一定になるまで続く。また,この現象は被検食材内部における伝導伝熱によって現われ,食材の種類,水分量,成分の相転移現象,あるいは冷却温度範囲等には影響されない。故に,食材の冷却現象は食材に内在する熱エネルギーの緩和現象として,その時間定数である緩和時間を用いて束一的に取り扱い得る。